2009年2月27日金曜日

引っ掛け問題

一年生の話

Yちゃんが自分の目を指差しながら、「先生、ここは何色?」と質問。
Yちゃんの目を覗き込みながら、「Yちゃんの目は黒だね。」
「ぶー!ハズレ!白でした。」
6歳児が相手なのに、何だろう、このプチ敗北感。

一部始終を見ていた男の子達が「僕達が先生の仇をとってあげるよ。」というので、L君にお願いしました。
「Yちゃん、僕に同じ問題を出して。」
「いいよ。ここは何色?」
「白!」
「ぶー!ハズレ!黒だよ。」

L君、「え、マジ、こんなハズじゃ。何が起きたのかわからねぇよ。」みたいな顔で僕を見ない。
「L君、これはね、引っ掛け問題なの。つまり、、、、、、」
「ああ、そうか。Yちゃんがズルしたんだ。」
「いや、ズルっていうより、ちょっとトリックがあって。黒と答えれば白だし、白と答えれば黒なわけ。だから、目の辺りを指差しているし、『目』と言わずに『ここ』って言ってるでしょ。」
「ああああ、そうか。OK。じゃもう一回いってくる。」

「Yちゃんもう一回!今度は僕が問題を出すよ。」
「ええー、もういいよ。」ネタがばれたので渋るYちゃん
「お願い!今度は僕にやらせて。」懇願するL君。勝つまでやりたいタイプだな。
「うん、、、じゃ、いいよ。」
「僕の髪は何色?」自分の髪の毛を指差すL君。ちなみに彼は金髪。
「、、、L君の髪は金色。」ちょっと困惑気味なYちゃん。
「、、、、、、えっと、ぶー!ハズレ。黒でした。」
「なにそれー。ズルだよー。」Yちゃんを筆頭に女の子達から非難轟々。


L君、それは引っ掛け問題じゃなくて嘘。

2009年2月26日木曜日

パパとの会話

ネタに事欠かないKindergartenのクラスから

クラスにやって来るなりSちゃんが唐突に一言
「私のパパね、ガールフレンドがいるの。」
離婚、再婚家庭が非常に多いアメリカでは十分ありえるシチュエーション。下手にコメントするより相槌を打ちながら、Sちゃんの話を聞きます。

「それでね、この前アンダーパンツを誕生日にもらって、パパはすっごく喜んでた。ママの事大好きだって。」
「んん?Sちゃんのパパのガールフレンドってお母さんのこと?」
「そうだよー。ママに決まってるでしょ!」
「なんだ、紛らわしいな。じゃ、最初からお母さんって言えば良いじゃない?なんでガールフレンドなの?」
「パパね、ずっと前にもママからアンダーパンツをもらって、それで結婚したんだって。」
「良かったね。ところで、アンダーパンツって何?」
「ええー知らないの?ズボンの下にはくズボンだよ。」



Sちゃんお父さん。近いうちにプロポーズに至る経緯のストーリーを親子の間でもう一度確認する事をお勧めします。娘さんは交際していた頃に奥さんから贈られたステテコが決め手になったみたいな言い方をしていますよ。






Kちゃんの話

「私ね、大きくなったら獣医さんになるの。」
「へぇ、いいね。動物が好きなんだ。」
「うん。それにね、獣医になれば私、一人で生きていけるし。」
「一人で生きていけるって。じゃ、Kちゃんは結婚しないんだ。」
「しないよー。パパがやめておいたほうがいいって。」
「お父さんがそんな事いったんだ。でもなんで?」
「私が『男の子なんてダイッキライ。』って言ったら、じゃぁ結婚しないほうが良いって。」
「Kちゃんは男の子が嫌いなの?」
「うん、だって私の靴を踏んづけても『失礼しました』って言わないんだよ。」
「それじゃ、Kちゃんはマナーの悪い男の子とは結婚しないで、一人で獣医さんでやっていくんだね?」
「うん。あ、でもパパが私のアシスタントになるって。」


Kちゃんのお父さん。五歳児相手に大人気ないです。今でこそ理論のすり替えでもって色々吹き込めますが、こういう事って謀れば謀るほど裏目にでますよ。

2009年2月22日日曜日

Differenciated Instruction

本題に入る前に、フェア/公平について少々。これには大きく二つの考え方があります。

A君とB君にビスケットを一枚ずつ与えるのは公平です。同じ量を与えるわけですから当然です。でも、B君の方が体が大きいので、B君にビスケットを二枚与えのるはどうでしょう。この二番目の方法は一見不公平ですが、誰しも必要な物や量は違うわけで、必要に応じて質や量をコントロールするのも見方によれば公平なわけです。

この二番目の公平を教育現場で実践せよというのが、最近のシカゴの流れです。全ての生徒が同じ授業を受けるのは当然公平ですが、そこから一歩進んで、個々の生徒が最も伸びやすい形で授業をする。例えば、A君とB君では理解の度合いや得意な勉強方法が違うので、それぞれにあった形で教える。簡単に言ってしまえば、「生徒個人の必要に対応した授業とカリキュラム」これはDI=Differenciated Instructionと呼ばれ、ここ数年注目を浴びている教育法です。

なんか難しそうに書きましたが、全く新しいアイディアじゃありあません。むしろ既存の教育法に新しい名前を付けた感じ。教師をやっている人間なら、度合いの違いはあり、皆少なからずDIを実践しています。どんな事を教えるにしろ、一パターンのみで構築された授業はないわけで、あれやこれや色々取り入れて工夫しています。むしろ教師の良し悪しは、如何に多くのネタを持っていて、必要に応じて使い分けられるかと言っても過言ではないかと。黒板に板書したのを写させるだけの授業をやっているようじゃ、生徒が居眠りしてもあまり文句は言えません。(だから居眠りをしても良いわけじゃないですよ。ダメです絶対。)

物事には度合いというものがあって、このDIも当然やり過ぎると収集がつかなくなります。生徒のニーズは非常に多岐に渡っていますから、全員のニーズを満たそうなんて不可能です。第一、限られた時間の中で消化しなければならないカリキュラムがあるわけですから、実践する以上は上手に調整をしなくてはなりません。

愚痴っぽくなりますが、ウチの校長はDIを非常に薦めます。DIのための会議と結果報告。更には授業計画を提出しなさいなんて言われた日には、もうどうしようかと思いました。ただでさえ仕事があるのに、更に書類の仕事を増やしてくれるなと。書類の仕事が三倍から四倍に増えた気分です。自分の本業が書類作成なのか教えることなのかあやしくなってきました。

まぁ校長は上司なわけですから、言いつけには従いますけど、このままだと書類を「作る」ようになるのも時間の問題かと。本当かどうかは別として、書面の上でみかけがよければ、とりあえずそれでOK。そもそも、教師のニーズに応じて提出物のリストを見直してほしいものです。生徒だけがDIの恩恵にあずかるのではなくて、教師にだって応用してもいいんじゃないかってね。

最近同僚達と放課後に行うDIミーティングはDifferenciated Intoxication。あたしゃワインであんたはビールみたいな。みんなで同じビールを飲むのではなくて、自分のニーズに合ったお酒で酔うのもいいものです。

2009年2月21日土曜日

ショック!

Kindergartenの話

カールエリック氏の絵本「Brown Bear, Brown Bear, what do you see?」を元にクラスで絵本を作っています。絵本といっても、子供の絵を厚紙に貼り付け、最後に全ページを糊で張り合わせるという簡単な物。完成したら、子供達には絵本の文章を暗唱させて「読んでいる」ことにしています。

最近は毎日のようにクラスで絵本のための絵を描いているわけですが、子供達は自分の絵が一通りできると僕に持ってきて、「これでいい?」と聞ききます。その際に、「縁取りを黒いクレヨンで塗ってごらん。」とか、「馬の足は二本じゃなくて四本だよ。それに蹄で指はないから。」なんて会話をしています。

Bちゃんは自分の絵を持ってくると、指で僕の腕をチョンと突っつきます。暫くするとまた戻ってきて、チョン。三度目は特に話しもせず、そろりと寄って来てチョン。「さっきから何?話があるならちゃんと話してごらん。」「はーい。」トコトコトコ、「えーとね、なんでもなーい。」チョン。

「いい加減にしなさい。こっちに来て座って、ほら。」すとん と隣に座るBちゃん。「せんせー?」「なに?」チョン バチッ!五度目にしてBちゃんの指が僕に触れた瞬間に静電気が走りました。「きゃー!せんせーにショックー」
それがやりたかったんだ。絵を描いてばっかりじゃ、退屈だったかな。

2009年2月18日水曜日

髭のあるナイスガイ

一年生の話

ひらがなの練習をしている時にL君が唐突に質問をしました。
「先生、神様って知ってる?」

いきなりディープな質問だなヲイ
どう答えようか迷っていると、L君が続けます
「僕は会ったことあるよ。髭のあるナイスガイだよ。」
「へぇ、、、髭のあるナイスガイねぇ。知らなかったよ。」



続いて少々昔の話になりますが、八年生の話

授業が始まるや、S君が一言
「俺、ダーウィンぶっ殺す!」
「朝からぶっ殺すたぁ、穏やかじゃないね。何か彼に怨みでも?」
「人間が猿からから進化したなんて、適当な事ぶっこきやがって、もう赦せねぇよ。」

ちなみに、これは月曜日の一時限目の話です。昨日の日曜学校で何か吹き込まれたんでしょう。

「まぁ、アメリカじゃ進化論は賛否両論だからね。それにしても、いくら君が『ぶっ殺す』って息巻いても、彼は当の昔に死んでいるから、どうもできないよ。イギリスに行って墓でも暴てみる?そうそう、言って置くけど、もちろん捕まるよ。」

この辺でやめておけばいいのに、まだ続けるS君
「俺が言いたいのは、アイツの言ったことは万死に値するってことだよ。もし一緒の時代に生きていたら、俺、ぜってー殺す。」
「さっきから『殺す、殺す』って随分荒れているようだけど、それは殺人ってことだよ。十戒を読んだことある?『汝の意見に異を唱える者を殺害せよ』とは書いてないでしょ?『殺してはならない』って書いてあるはずだよ。」




シカゴの公立学校で政教分離のコンセプトを守らないとクビが飛びます。規則は色々とややこしいので全ては書きませんが、ここで一つ確かなことは、生徒から振って来た話題に対して応答するのはOKということ。それにしても、シカゴのような都会でもS君のようなキリスト教極右派の家庭があります。